P12/Pons-Brooks彗星のダストテイル

日没直後であまり時間がないのですが、まずは可視vs近赤外で何か面白いことはないかな、と思い撮影をしてみました。

本当はフィルターを2枚組み合わせて「疑似ナローバンド」的な画像を撮る予定なのですが、なんせ時間がなく。UHCで一応光害はさけ、UV-IRcutで可視画像を、IR850で近赤外像(疑似Jバンド)としました。D200mm-F5, Pen-E PL5赤外改造機で撮影。

1枚目は可視、2枚目がIR850での近赤外像です。

左:可視像(UV-IR CUT, ISO10000-15s×9)  右:近赤外像(IR850, ISO3200-30sec×9)

近赤外撮影時はすでに山際ぎりぎりで背景とのコントラスト悪くISO3200としました。
さてこれだけではつまらないので、やはりダストの粒子に関心があります。

古い文献で、Mie散乱に着目したものがありました。(BELLUCCI , Earth, Moon and Planets 78: 305–311, 1997)

Hale-Bopp彗星はずいぶんいろいろと観測されていて、タイトルはずばり!「SPECTROSCOPY OF COMET HALE–BOPP IN THE VISIBLE/NEAR INFRARED: MODELING OF DUST PROPERTIES 」でした。太陽にあたる側と反対側で「赤味が違う」ということで、400nm~1000nmでのスペクトルが測定されています。解析では、ダスト粒子の種類と粒子直径(Reff)からMie散乱の式を基に散乱光強度の波長依存性が示されています。

そこで、この真似事をしてみます。

JPEG画像でもありがたいことに「マカリ」という画像処理ソフトがNAOから入手でき、おそらくたくさんの方々が利用しているものと思われます。このソフトで、

コマ中心の輝度が求められるので、ベースラインを適当にとれば一応コマ中心の強度が得られます。さらに、いくつかの恒星の輝度を求めてこれに対する比をとって、フィルターを変えた画像同士での比較が「一応可能」と考えました。

数値化した結果は、

ざっくり言って、近赤外領域のほうがコマ中心部の輝度(明るさ)が高い、と言えます、というか「と考えます」。

この結果と先の文献のグラフとの比べると、長波長のほうがコマが明るい、ということから、粒子直径は少なくとも1μ以上あると考えました。

今回は「こんなふうな解析方法はあるかな」的な試みですが、P12もより高度があがり、観測しやすくなった暁には、疑似ナローバンドで撮影してみたいです。

最後の前に、同じく「マカリ」で得た等高線図です。分布は同じようです。

左:可視像、 右:近赤外像(IR850)

最後に国立天文台の菅原さんの文献から。IR850ではイオン由来のスペクトルは見られないようです。

chiron.mtk.nao.ac.jp/COMET/comet_handbook_2004/2-4.pdf