近赤外撮影

赤外光観測はすでに30年くらいの歴史があるが、例えば赤外カットフィルターをカメラに付けると真っ黒で何も見えず、構図・ピントをどうするのかと思ってしまう。最近はデジカメの撮像素子の前のIRフィルターをとってしまう改造もいくつかなされており、市害光カットフィルターと合わせると都会でもバラ星雲や馬頭星雲などは見事に赤色が表現されている。

しかし電子接眼鏡(CMOS)使うとなると、適合するフィルターサイズがカメラレンズ用とは異なる、つまりレンズは49mmΦに対し望遠鏡用は48mmΦ、ということでやはり手を入れなければならない。

で、何をやりたいのかと言うと、IR72を使っての作例はあるが、もっと長波領域=近赤外領域でM42の中心部を撮ろうと計画した。昨年12月であるが、

国立天文台(NAOJ)1214日、重水素の割合が星の誕生時に最大になることを利用して、星が生まれそうな現場を野辺山45m電波望遠鏡を使って特定し、2020年に発表した「もうすぐ星の生まれる場所のカタログ」を補完する「電波地図」を完成させたことを発表した。」という記事を見つけたからである。

調べていくと850nm以上の近赤外~赤外領域での観測が有効らしく、まずはカメラでIRフィルターを取ってしまおうと思ったが、カメラを背面からばらしていく必要がありそうなので、さすがに躊躇している。

手持ちのコマとしてSV105という(安価な)電子接眼があったので、まずこのIRカットフィルターを外した。おそらく素子はInGaPだろうと思うので、そうであれば赤外まで感度はある。実際多くのリモコンで使われている。これにAmazonで手に入れたIR85という「真っ黒な」フィルターを付けるべくアダプターを手作りしてまずはSE120で昨晩M42にトライした。860nm以上の波長(maxは不明だが)で撮像できるはずである。

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各露出で数100~2000フレーム撮影し、Registaxでスタッキング処理した。右上は1枚撮りを参考のため。またすべてトリミングしてある。

右下は一番軽く露光したもので、4つのトラペジウムが見える。左上は長時間露光で、公開されいる写真と比較すると250mmの反射鏡で撮影した程度に微恒星が写っている。

星像がややまるっこいのは、そもそも赤外で波長が長いので分解能が落ちることと、大気の揺らぎを結構受けているためと推察している。

野辺山天文台の記事にあったが、星が生まれるとしても少なくとも10万年先のことのようだ。また今回撮ったところは中心部であり、星がuまれそうな場所とは少し離れている。次回はC8Nで分解能の比較をするということと、いずれは星の生まれるという場所の撮影を試みたい。